『ダンダダン』感想レビュー|宇宙人と幽霊のバカ漫画だと思っていた3年を返してくれ
「宇宙人と幽霊がケンカする漫画でしょ?」
そう言って、俺は3年くらい『ダンダダン』を読まなかった。
その3年を返してくれ。マジで返してくれ。
きっかけは、少年ジャンプ+の無料枠を何の気なしに開いたことだった。1話だけ読むつもりだった。気づいたら深夜2時で、気づいたら単行本を全巻カートに入れていて、気づいたら「次の火曜、まだか」と曜日を指で数える人間になっていた。
いま「どうせイロモノでしょ」って画面の前で思ってるあなた。ちょっと待って!! その判断、俺が無駄にした3年をそのままなぞるやつだから!!
まずは『ダンダダン』の基本情報から
| 作者 | 龍幸伸 |
|---|---|
| 掲載 | 少年ジャンプ+(集英社) |
| 第1話掲載日 | 2021年4月6日 |
| 既刊 | 24巻(2026年8月時点) |
| 更新 | 毎週火曜。最新2話は無料で読める |
| 公式あらすじ | 幽霊を信じないオカルトマニアの少年・高倉と、宇宙人を信じない少女・綾瀬は、互いの理解を超越した圧倒的怪奇に出会う――…!オカルティック青春物語!! |
| TVアニメ | 制作はサイエンスSARU。第1期は2024年10月からMBS/TBS系全国28局で放送。第3期の2027年放送が決定済み |

第1話の組み立てが暴力的すぎる。あれで逃げられる人間いる?
話の入り口はシンプルだ。幽霊は信じるけど宇宙人は信じない綾瀬桃と、宇宙人は信じるけど幽霊は信じない高倉健(オカルン)。二人が「じゃあ証明しろよ」と喧嘩別れして、片方は心霊スポットへ、片方はUFOスポットへ向かう。
普通の漫画なら、ここで片方を空振りにする。読者を焦らして、引きを作って、次週に回す。それが正しい。それが上手いやり方だ。
龍幸伸はやらない。両方いた。
1話で全カードを開ける。開けたうえで、オカルンから男として一番大事なものを容赦なく奪っていく。俺は深夜に一人で声出して笑った。げらげら笑った。
そのまま次のページで、モモが本気で怒るコマが来る。ここで一気に体温が下がる。
この落差だ。この落差こそが『ダンダダン』の全部なんだよ!!
ギャグとホラーとバトルと青春を、同じ1話の中で、しかも同じ密度で成立させている。これを新連載の第1話でやってる。頭がおかしい(褒めている)。
絵で殴られて記憶を失った
『ダンダダン』を語るとき、絵の話を後回しにするのは不誠実だと思っている。だから先に言う。この漫画は絵だけで金が取れる。
龍幸伸の描く怪異は、怖い方向にも、生理的にキツい方向にも、なぜか妙に可愛い方向にも、全部振り切れる。同じ作家の線とは思えないくらい引き出しが広い。
そして背景。団地の外壁の汚れ、絡まった電線、夜のコンビニが放つ白い光。「日本のどこかに絶対ある」手触りが徹底して描き込まれている。だからこそ、その真ん中に人外が立っている絵が本気で怖い。日常が丁寧だから、非日常が刺さる。
「絵が上手い漫画」なんて世の中に山ほどある。そう思ってるでしょ。違うんだって。これは絵が速い漫画なんだ。1ページの中でどこに視線を落とすかまで設計されていて、読んでる側の目が勝手に走らされる。自分の意思で止まれない。
だから深夜2時になる。俺のせいじゃない。構図のせいだ。
バトル漫画だと思って読むと、ラブコメに足をすくわれる
勘違いされがちなんだが、この漫画の本体はバトルじゃない。モモとオカルンの距離だ。
怪異と殴り合った直後に、二人はどうでもいい理由で気まずくなる。命がけの戦いのあとに残るのが「さっきの、どういう意味だったの?」みたいな話なのが最高にいい。
そしてこの二人、露骨にくっつかない。焦らしてるんじゃなくて、単純に本人たちが自分の感情を処理できていない。高校生ってそうだよな、という納得のさせ方をしてくる。
巻を追うごとに仲間が増えていくんだが、その全員に「この漫画に居ていい理由」がちゃんとある。数合わせのキャラがいない。ここ、地味だけど本当にすごい。
泣くとは思ってなかった。本当に思ってなかった
怪異には、生きていた頃の理由がある。
これ自体は珍しい構造じゃない。むしろ手垢のついた型だ。
でも『ダンダダン』は、それをギャグの直後にぶつけてくる。さっきまで下ネタで笑わされていた同じ手で、こっちの喉元を掴んでくる。感情の準備をさせてくれない。
俺、通勤電車の中で読んでて本気で危なかった。マスクの下で顔が歪んでいるのを、隣の人に見られていないかだけが心配だった。
宇宙人と幽霊が出てくるだけの漫画だと思っていた人間が、電車で泣きそうになっている。この事実だけで、この漫画の勝ちだ。
アニメも最高。でも順番は原作が先だ
サイエンスSARUのアニメ、仕事しすぎだろ。動く、色が暴れる、音がうるさい。原作の速度をアニメの速度に翻訳しきっている。第3期が2027年に来ると聞いて、俺はもう予定を空けている。
そのうえで言う。まず原作を読んでくれ。
理由はひとつ。ページをめくる速度を自分で決められるからだ。この漫画は「うわ」と思ったコマで一回止まって、また戻って見返すのが一番おいしい。アニメは止まってくれない。原作は止まってくれる。
どこで読めばいい?

- 少年ジャンプ+で毎週火曜に更新。最新2話は無料で読める
- 第1話は今も無料で公開されている。まずここを開けばいい
- 単行本(ジャンプコミックス)は24巻まで刊行済み(2026年8月時点)
1話が無料なのが本当にタチが悪い。あれは無料で配っていい濃度じゃない。開いたら最後、ジャンプ+のアプリがホーム画面の一等地に居座ることになる。
まとめ:3年前の俺に読ませたい
- 第1話で全部見せる潔さ。焦らしがなく、初速が異常に速い
- 背景と怪異の描き込みが凄まじい。日常が丁寧だから非日常が刺さる
- 本体はバトルではなくラブコメ。モモとオカルンの距離の詰め方が上手い
- ギャグの直後に泣かせにくる。感情の準備をさせてもらえない
- アニメも良い。ただし止まって見返せる原作を先に読むべき
「宇宙人と幽霊がケンカする漫画でしょ?」
合ってる。合ってるけど、それは表紙の話だ。中身は、真正面からの青春漫画だった。
読んでない人は今すぐ1話を開いてほしい。そして深夜2時になってほしい。道連れが欲しい。
