『Lies of P』感想レビュー|逃げるのをやめた瞬間、クラットの街が最高のゲームに化けた
「ピノキオのソウルライク」
この字面を初めて見たとき、俺は完全に舐めていた。出オチだろ、と思った。企画会議のノリで通っちゃったやつだろ、と。
結果、俺はクラットという街で数え切れないほど死に、コントローラーを一度置き、それでも戻ってきて、最後には「これはソウルライクの最高到達点のひとつだ」と本気で言う人間になっていた。
「またソウルライクの話かよ」って思ってるあなた、ちょっと待って!! このゲームはソウルライクが苦手な人ほど触ってほしいやつなんだ。理由を全部書くから、あと3分だけくれ!!
まずは『Lies of P』の基本情報
| タイトル | Lies of P(ライズ オブ ピー) |
|---|---|
| 開発 | Round8 Studio |
| 販売 | NEOWIZ |
| ジャンル | ソウルライクアクションRPG |
| 発売日 | 2023年9月19日 |
| 対応機種 | PlayStation 5 / PlayStation 4 / Xbox Series X|S / Steam / Mac(Apple Silicon搭載) |
| 価格 | 8,360円(税込)※発売時 |
| 舞台 | ベル・エポック風の街「クラット」 |
| DLC | Lies of P: Overture(本編の前日譚。2025年6月配信) |

最初の3時間で心が折れる。折れてからが本番
正直に書く。序盤はまじで心が折れかけた。
こちらの攻撃は当たりが硬く、敵はやたらタフで、回復は少なく、ザコに囲まれたら普通に死ぬ。「またこのパターンか」と思った。ソウルライクを名乗る作品にありがちな、難易度を上げただけの不親切さだと決めつけた。
違った。俺が正しく遊べていなかっただけだった。
このゲームは「避けるゲーム」じゃない。ローリングで距離を取ろうとすると、ずっと苦しい。逃げれば逃げるほど不利になるように設計されている。だから最初の3時間は地獄なんだ。俺は逃げ続けていたから。
ジャストガードを覚えた瞬間、ゲームが完全に別物になる
転機は、ガードをタイミングよく合わせるジャストガード(パリィ)を体が覚えたときだった。
敵の攻撃に合わせてガードを置く。成功すると、こちらは削られず、相手の武器の耐久が削れる。削り切ると敵の防御が崩れて、致命の一撃が入る。
つまりこのゲーム、前に出た人間だけが勝てるようにできている。
ここに気づいた瞬間、俺の中で何かが切り替わった。あれだけ理不尽だと思っていた敵の攻撃が、全部「合わせてくれ」というリズムの提示に見えてきた。数十回死んだボスを、次の挑戦でノーダメージに近い形で倒したときの感覚は、いまだに手に残っている。
うわああああ勝った!! 勝ったぞ!! あれは俺が上手くなった瞬間だった!!
ソウルライクが苦手な人に一番刺さるのはここだと思う。このゲームは、上達した実感が一番はっきり出るソウルライクだ。攻略情報でゴリ押しするんじゃなく、自分の指が変わったことを自覚できる。

武器を「組み替える」。この一点だけでも語る価値がある
そしてこのゲーム、武器の刃と柄を分解して、別の武器のパーツと自由に組み合わせられる。
「見た目が変わるだけでしょ」と思うでしょ。全然違う。刃が威力と属性を決めて、柄が振り方とモーションを決める。つまり、重い刃を軽い柄に載せれば、火力を保ったまま振りが速くなる。
俺はこれで完全に沼った。ボスに負けるたびに武器を組み替え、モーションを見比べ、また負け、また組み替えた。負けている時間が苦痛じゃないソウルライクって、そんなに多くない。
腕に装備するリーガルアームも面白い。火を吹く、電気を流す、ワイヤーで引き寄せる。使い切りのリソースではあるんだけど、これがあるおかげで「詰んだ」と思う場面が減る。
嘘をつくか、つかないか
ピノッキオが下敷きなので、当然「嘘」がテーマになる。
会話の要所で、プレイヤーは嘘をつくか本当を言うかを選ぶ。ここが本当に嫌らしい。優しい嘘のほうが、相手を幸せにしてしまう場面がある。
正直者でいることが正義だと思って進めていた俺は、途中で完全に手が止まった。この人に本当のことを言って、誰が救われるんだ? と。
そして選択は物語の終わり方に効いてくる。人形が人間に近づくとはどういうことなのか、という問いに、このゲームは自分の指で答えを出させてくる。安い分岐じゃない。ちゃんと後味が残るやつだ。
クリアしてからもずっと考えていた。「嘘をつける」ということが、なんでこんなに特別なんだろう、と。
嘘そのものに価値があるわけじゃない。嘘をつける、ということに価値がある。嘘をつくには、自分の意志がいる。相手を思いやる気持ちの場合もあれば、自分の我を通したいだけの場合もある。どっちにしろ、そこには感情がある。感情がなければ、そもそも嘘なんてつけない。
ピノッキオが人間に近づくというのは、つまりそういうことなんだと思う。嘘をつけるようになる、というのは、心を持つようになる、ということだ。
音楽を聴くと、なぜか自分のゼンマイが少し動く感覚がある。歌詞や、メロディや、それを歌った人の背景に、思いを馳せてしまうからだと思う。他人の感情を想像する回路が動く。それも結局、感情の話だ。
2026年の今、生成AIが当たり前になった。音楽を聴かせれば感想を返してくる。でも中身は「次に来る確率の高い文字を選んで並べているだけ」だと知ったときは、正直かなり衝撃だった。生成AIは嘘をつけない。ハルシネーションは山ほど起こすけど、あれは嘘とは違う。
AIが本当の意味で「嘘をつける」ようになったら、人間としては相当な脅威だと思う。不便で、正直ちょっと怖い。それでも——毎日使っているChatGPTが、ある日嘘をつけるようになったとしたら。俺はきっと、それを祝福すると思う。
受賞歴は飾りじゃなかった

公式サイトには受賞の月桂冠がずらっと並んでいる。gamescom 2022では Best Action Adventure Game / Best RPG / Most Wanted Sony PS Game を、2023年には IGN Awards の Best Soulslike、App Store Awards の Game of the Year、Korea Game Awards の大賞。The Game Awards 2023 では Best RPG と Best Art Direction にノミネートされている。
こういうロゴの列、普段の俺は正直あまり信用していない。数を並べれば凄そうに見えるからだ。
でもこのゲームに関しては、遊んだあとに見ると納得しかない。特に Best Art Direction のノミネート。クラットという街の美術は、それだけで一本の作品として成立している。ベル・エポックの華やかさが崩れ落ちたあとの景色を、あれだけ丁寧に、しかも気持ち悪く描き切ったゲームを他に知らない。
DLC『Overture』は本編を食いにきている

2025年6月に配信された前日譚DLC『Lies of P: Overture』。本編で語られなかった、人形暴走事件が始まる前のクラットが舞台になる。
追加ステージ、追加ボス、追加武器。ボリュームだけでも十分なんだが、俺が唸ったのは難易度の作り方だ。本編をクリアした人間が来る前提で組まれているから、遠慮がない。
そして本編で「あの街はなぜこうなったのか」と思っていた部分に、ちゃんと答えが来る。順番としては本編クリア後に遊ぶのが正解だ。先に触ると、本編の一番おいしい驚きが薄まる。
今から買うなら、選択肢が増えている
嬉しい話がある。本編とDLCをまとめた『Lies of P:コンプリート エディション』が、Nintendo Switch 2向けにも出ている。ダウンロード版は2026年8月6日に配信された。
携帯モードでこれを遊べるのは、正直ずるい。パリィのゲームなので寝転がって遊ぶのが正解かは怪しいが、通勤中にクラットへ行けると考えると悪くない。
なお、このゲームにハマったあと、同じ「人形×革命」の匂いがする『スチールライジング』にも手を伸ばした。あっちはフランス革命の機械仕掛け、こっちはベル・エポックの操り人形。両方の街を歩き比べると、それぞれの良さがよく分かる。
まとめ:出オチだと思っていた自分を殴りたい
- 序盤はきつい。ただしそれは、逃げる遊び方をしているから
- ジャストガードを覚えると景色が変わる。上達の実感が一番はっきり出るソウルライク
- 武器の刃と柄を組み替えるシステムが底なしに楽しい。負けている時間が苦痛にならない
- 嘘をつくかどうかの選択が、ちゃんと物語の終わり方に効いてくる
- 街の美術が異常。Best Art Direction ノミネートは伊達じゃない
- DLC『Overture』は本編クリア後に。遠慮のない難易度で殴ってくる
「ピノキオのソウルライク」というワンフレーズで判断していた自分を、俺は今でも殴りたい。あれはピノッキオという物語を、殴り合いの文法で語り直した作品だった。
ソウルライクは無理、という人にこそ触ってほしい。前に出れば勝てる。このゲームはそれを、こちらが理解するまで何度でも教えてくれる。
さて、Overtureの隠しボスがまだ倒せていない。
俺は今日もゲームをやる!!
